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放浪記
その無軌道な足跡の数々


2002.06.21 羽村山口軽便鉄道廃線跡

トトロの森こと狭山丘陵の奥には東京の水がめである多摩湖と狭山湖がある。多摩湖には湖岸を一周するサイクリングロードも整備されている。その途中の多摩湖の一番西側のあたりからサイクリングロードが分岐している。武蔵野の道である。前回通りがかったときに気になっていたので、好天に誘われて自転車で出かけた。出かけたときは武蔵野の道が鉄道の跡だとはまだ知らなかった。

東京都水道局が建設した人造湖である多摩湖と狭山湖の堰堤には羽村あたりの多摩川の砂利が使われている。先に出来た多摩湖は国鉄の路線を使って砂利を運んだが、その後に作られた狭山湖は専用の貨物鉄道を作って砂利を運んだのだという。この路線は旅客営業はしていないため一般にはほとんどその存在を知られることもなく、地図にも描かれることもなかった。東京都水道局の私的な施設であったため正式な路線名すらないのだが、羽村と山口(狭山湖は山口貯水池とも云う)をつなぐ鉄道ということで、便宜上、羽村山口軽便鉄道と呼ばれる。

まずは西武狭山線沿いに多摩湖を目指す。途中、衝動的に15年前に廃止された西武山口線跡を求めてユネスコ村付近に迷い込む。西武球場からちょっと奥に入っただけだというのに、なんかかつてSLが走っていたとはとても思えん寂れっぷりである。ユネスコ村駅跡と思われるあたりは草ぼうぼうで何かなにやら。後日再探検するとしよう。

多摩湖湖岸のサイクリングロードに入る。しばらく行くと小さな公園があり、カブト橋という橋が湖と反対側に伸びている場所に出る。ここがサイクリングロードの分岐点で、武蔵野の道の起点となる。足元には0kmのプレートが埋まっている。辺りは緑豊かで、通りがかる車も少なく森閑としている。ホントに都内か。カブト橋の名にふさわしく、橋にはカブトムシの像が貼っついており、欄干にもカブトムシの模様があって楽しげである。

橋はかなりの急勾配で下り、森の中に消えている。軽い気持ちで漕ぎ出したところ、橋を渡り終えるとそこは未舗装の砂利道。まるで登山道である。昨晩の雨で状態も悪くとても自転車が走れる道には思えん、と思っていたらしまいには階段まである始末。なんじゃい、と呆れて自転車を押して階段を下りると森はそこで終わりで、そこから先は普通の町並みが連なっている。ここからは綺麗に整備された自転車道になる。順路に沿って走り出すとすぐに御岳トンネルに突き当たる。

ここまで来てようやく羽村山口軽便鉄道の存在を思い出す。このあたりにあるとは知っていたがまさか自転車で簡単に来れる場所だとは知らんかった。

トンネルの風情がいかにも廃線跡である。トロッコが走った単線の軽便鉄道だったので、トンネルの内径は小さい。ここを含め全部で5つのトンネルがあるのだが、自転車道として利用されているのは御岳、赤堀、横田の3つのみ。残る2つのうち1つも中を通れるが、一番多摩湖側のトンネルは閉鎖されており、水道局の管理となっていて立ち入り禁止である。自転車道となっている3つのトンネルの出入り口にはシャッターがあり、夜には閉まるようだ。中に住みつくのでも居るのだろうか。

短い3つのトンネルを抜け、青梅街道を横切るとあたりが一気にひらける。日影を作っていた木立が無くなり、暑い。自転車道は交差する道路を不自然な角度で何度も横切りひたすら真っ直ぐと伸びている。テスト期間中だろうか、まだ昼をすぎたばかりなのにときおり下校中の制服とすれちがう。

変化に乏しい景色の中を数キロ進むと、自転車道は江戸街道に突き当たる。自転車道は唐突にここで終わる。道路の向かい側に草生した空き地が見える。この先は横田基地につきあたる。羽村山口軽便鉄道の廃線は横田基地の反対側にも残っているのだが、当然横田基地内には入れない。迂回するとかなりの回り道になるので、とりあえず今回はここで終わり。帰り道、多摩モノレールに萌えたりしていたのはまた別のハナシである。

【廃線跡のサイクリングロード この背後は横田基地】



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