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放浪記
その無軌道な足跡の数々


1999.01.15 なんとなく金沢行き

新年早々、某氏より放浪の誘い。目的地はガーラ湯沢。私と某氏との数少ない共通の未乗区間である。運良くか運悪くかその時期に飯山線に乗りに行くつもりだったので二つ返事で快諾。斯くして、某氏はわざわざ寝台で、私は始発でガーラ湯沢を目指すことになったのであった。もちろん二人ともスキーをするつもりは毛頭ない。

1/15、まだ真っ暗の早朝に目覚めるも、大宮に6:30に到着する某氏に合流する唯一の筋となる東西線の始発には間に合わず。一気にテンション下がる。新幹線なら東京8時台発ので追いつけるので寝直す。明るくなった頃、某氏より電話。「宮原からの臨時が運休なんで予定ずれる」。はて、昨夜はそんなに荒れたっけか。

ガーラ湯沢は平成2年に開業した冬季のみ営業の臨時駅。駅のコンコースがそのままスキー場のレストハウスとなっていて、新幹線を降りて1分で滑走可能。本当にスキーのためだけにある駅である。

3連休。案の定、エラい混雑である。それでもなんとか着席できたので、ぐう、と寝て起きれば越後湯沢。板を担いでぞろぞろと下車する乗客に逆らってわざわざ乗り込んでくる客約一名。即ち某氏と合流。越後湯沢を過ぎると、そろそろとほとんど加速もせずにガーラ湯沢駅到着。スキーウェアだらけの中、手ぶらにジーパンと場違いな格好をした二人組は出口を探してうろうろ。スキー場への出口は立派で非常に分かりやすいのだが、スキー場以外への出口が非常に分かり難い。どこじゃあ、と暫時。非常階段のような武骨な階段を降りてようやく外界へ。あたり一面雪だらけ。振りかえればスキー場がデンとあるのみで、近くに土産屋の一件も見当たらない。・・・路面では温泉街らしくお湯を派手に撒き散らして消雪している。ガーラ湯沢駅前は結構な斜面で、お湯がジャボジャボ流れていて、転んだらエラいことになりそうな感じ。なんとなく歩き出し、高架のくぐり抜けて、しばらく進むと土産物屋街。軒先を散歩がてらのんびりと進む。先週の大雪の余波か、そこかしこで雪下ろしの姿を見掛ける。

【ガーラ湯沢駅・・・見た目はレストハウス】


次なる目的地は越後川口。眺望車で車窓を堪能しつつ飯山線を行く、という計画である。しかし、綿密な計画ほどあっさりと崩れるという経験則が見事に的中。越後川口で飯山線への連絡待ちで改札を抜けると、駅員から無情な知らせ。「次の飯山線の列車は十日町で打ちきり」。なぬ、と突如待合室が騒がしくなる。全員時刻表引っ張り出す。テツばかりじゃ。私は、と云えば、テンションぐぐぐっと下がり、新たなルートを検索検討するのが面倒になったので、何も考えずに金沢に向かう某氏のルートに乗っかることにする。すぐさま、金沢に宿を予約。何してんだ。

眺望車、というからにはリゾートしらかみクラスの立派な車両を期待していたが、やってきたのは雪国では見慣れたキハ110。ロングの座席が一列、外を向いている。信濃川を眺めるのだろうけど、肝心の信濃川が飯山線沿いに現れるのは十日町を超えてから。意味ないなあ、と考えているうち十日町。ここで飯山線に固執すると十日町で3時間も時間を潰さねばならない。ので、30分ほどでやってくる北越急行線、通称ほくほく線で直江津を目指すことにする。

北越急行線は国鉄時代の未成線を高速規格で作り直した路線。新幹線の連絡路線として結構繁盛している模様。

JRの十日町駅はローカル線にありがちなひっそりとした佇まいの駅。むやみに広い駅構内には人影も見えずしんとしている。そんな風情はお構い無しに北越急行線は駅の上を高架で走っている。そこには場違いに近代的で鋭角な北越急行線の駅がある。北上や一ノ関のように、のどかな在来線の駅に新幹線の駅を無理矢理併設したようなアンバランスさがある。ホームに出る。あたりに高い建物がないため、遠くの山の麓まで延々と雪原が広がっているのが見渡せる。風が冷たい。

北越急行線は高速規格である。つまり、トンネルや橋梁などで地形を無視してひたすら真っ直ぐ走る線路なのである。トンネルトンネル橋梁トンネルといった感じ。車窓は真っ暗なトンネルの壁ばかり。トンネルが長いせいか、トンネル内での列車交換といった珍しい体験もできる。しかし繁盛する訳だ。長岡を廻らなければならなかった以前にくらべ、越後湯沢から直江津までの時間が半分で済む。犀潟で高架を降りて直江津到着。あれ、駅がない。直江津駅は建て直しの真っ最中、片隅にプレハブの駅舎。

以下、動的に西を目指して金沢に到達する。あられまじりの荒天。某氏のjaist時代の後輩の面々が某氏を迎えにきていた。図々しくも初対面の彼らの車に便乗して、角間にある第7ギョーザに晩飯を喰いに連れていってもらう。ホワイト大大豚汁。あいかわらずのボリュームじゃのう、せぶんすぎょざー。のち様本にて散財、散会。ホテルで適当に予定を組み上げ、ベッドに潜り込む間もなく就寝。

1/16未明。せっかく北陸まできたのだから北陸の心残り(=未乗車区間)の更新に精を出そう、と、まだ日も昇らぬうちに出立。

高岡から氷見線へ。車窓には延々と冬の日本海が広がる。駅前がそのまま海岸になっている駅がいくつもある。夏場は賑わうのだろうなあ、と思いを巡らすが、どんよりとした鈍色の空の下では寒々しいことこの上ない。終点氷見から七尾線羽咋まで延伸の計画があったというが、今となっては遠い夏の夢のごとし。学生服がじゃんじゃん乗ってくると思ったら、今日は休みじゃないのか。

【高岡駅にて 氷見行き】


高岡から城端線へ。観光シーズンは常花線としてアピールをしているらしい。城端線は富山県最古の路線で北陸本線より古い。そのため城端線への列車は北陸本線を差し置いて、1・2番ホームである。これまた雪野原をのんびりと走る。途中の砺波駅のあたりでは、春先はチューリップが咲き乱れると云うが、これもあたりは見渡す限りの雪原。城端駅で用足し・・・改札の内側と外側でトイレを兼用しているので、トイレを経由すると無札で改札の中に入れてしまう。いいのか。

三度高岡に戻ると、冬の日本海を眺めつつ東進。直江津からは昨日と同じ北越急行線。田圃の上の高架はやっぱり違和感がある。

さて、昨日乗れなかった飯山線は十日町から豊野に再挑戦である。学校帰りの学生服にもまれて、乗車。座れなかったのでカブリツキ(運転台の後ろから進行方向をじっと眺めること)へ。ま、ロングでは外が見づらいし。十日町を出ると、あたりは山。雪また雪である。線路の両脇にはうずたかくラッセルで跳ね上げられた雪が積み重なり、白い切り通しができている。場所によっては車窓から雪の壁以外何も見えない。スノーシェードには軒並み1m以上の雪がかぶっているのが見える。列車の振動で線路脇の雪がどさりと路盤に落ちる。駅はどこもすっぽりと雪に埋まり、かろうじてホームの端を1mほど除雪してある程度。駅名がすっかり埋もれて駅名が判別できない駅も。暮れてきて駅のホームに灯りが灯れば、薄暗い雪の切り通しの途切れたところからぼんやりと光が零れ、まるで地下鉄の駅のよう。線路の南には信濃川が悠然と流れている。雪も降り出し非常に良い感じである。これで車両が気動車じゃなきゃなあ。・・・雪の夜、長大編成の客車が無人駅に停車する。車両に客は自分一人。ホームにはしんしんと降り積もる雪。まるでこの世が滅んでしまったかのような静寂。一昔前なら東北本線あたりでいくらでも体験できたこのシチュエーションも遠い日の幻か・・・。戸狩野沢温泉あたりですっかり日が暮れる。それまでガラガラだった車内もスキー帰りの派手なウェアを着込んだ集団で一気ににぎやかになる。さっきまでの気分ぶち壊しである。

【雪に埋もれた駅名】


横軽亡き今、長野から東京に18きっぷで帰ろうとすると塩尻経由になるのだが、これが結構遠い。塩尻から血迷って中央線を西に向かうおそれもあるので、素直に長野からは新幹線。長野は近くなった、そして遠くなった。

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